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パンクで、ピュア、素朴な革命家。©ライフスタイルマガジンRENOSTA/雨森 武志氏

ライフスタイルマガジンRENOSTAの雨森さんに、以前インタビューしていただいた記事が、とても素敵に上手く表現してもらえているので、そのまま転用させていただきます。

http://www.reno-s.com/special/nine 転用元ホームページ


ファッション、音楽、そして社会的革命。

今回お話を聞いたのは、9株式会社の代表、久田さんです。その出で立ちは、建築関係というよりは、完全に大物ロックンローラーのそれ。しかも、オフの日というよりは、今まさにステージに上る瞬間のように仕上がった状態です。引き締まった肉体に、タイトな黒いジャケットが、バシっときまっています。

それもそのはず。久田さんのからだを流れる血は、『建築』や『設計』というよりも、『ファッション』と『音楽』によってつくられ、醸成され、絞り出されたもの。

「僕は30歳までファッションのデザインをやっていました。だから今も建築というよりは、ファッション的な感覚と手法で、空間のデザインをしています。つまり、『どう見えるか』を大切に、表層を整えていくイメージです。

ファッションというのは、時代の流れや、その時々で人々が何を新しいと感じているかをつかみとり、さらにその少し外れたところに本質を見出すもの。それと同じ感覚で、建築をやっていますね」

30歳にして、それまでとはまったく違う業界へと転職をした久田さん。そこから5年間、大工として家のつくり方を学び、その後、服をつくる感覚で、自身の家の改装にチャレンジしたと言います。

当時はまだ『リノベーション』という言葉もなかった時代。できあがったマイホームは、現在のトレンドとも言える無垢のフローリングと、天井と壁にペンキを塗っただけのスケルトン空間でした。そこをオープンハウスとして営業活動をすることで、事業をスタートさせ、今につながっているそうです。

そもそも社名である『ナイン』という言葉。どこに由来があるのでしょう。もしかして、学生時代は野球部に所属? もしくは、同名マンガのファン??

そうではありません。そのワードには、久田さんの仕事への向き合い方、そしてクライアントへの付き合い方への想いが入っていました。

「『ナイン(=9)』は、『10』に1つ足りない数字。つまり『完成していない』という意味が詰まっています。我々がやっている建築や内装って、つくり切ってしまうとそこで終わりだし、そもそもつくり切るなんて、無理なんですよ。

例えばMacやiPhoneといったアップルのプロダクトを考えてください。世界的なトップデザイナーが集まった精鋭チームが、何年もかけて一つの製品をつくり出す。そういうものこそが、本当のデザインだと僕は考えています。それと比べて、我々は初めて会った人と、試作もつくらずに、たかが数ヶ月で建てていく。それで完璧なものなどつくれる訳がないんです。自惚れてはいけません」

服や雑貨などと違って、住んでみてイメージが違っていても、もう一度、つくり直すことができない世界。「完璧なものなど、つくれない」という衝撃的な発言の奥には、潔さと謙虚さ、そして強い責任感が潜んでいます。

「設計事務所の人って『あなたの夢を叶えます』みたいなことをよく言いますよね? でもやっぱりそれは不可能ですよ。そんな甘いものじゃない。個人の家にしても、店舗にしても、図面やパースではよくても、実際に使ってみたら、少し違うなって感じることはゼロではありません。だからといって服と違って、もう返すことはできない。

そう考えると、最後までつくり切らず、残せる部分は残して、時間をかけて詰めていった方がいいんですよ」

ファッションと並んで、もうひとつ、久田さんを語るうえで欠かせないのが音楽。ナインが手がけた空間からは、ミュージシャンのライブで、ステージから放たれる圧倒的な衝動と似たエネルギーを感じます。

音楽との出会いを聞くと、社内の壁に貼られた1枚のポスターを指で差しながら、説明をしてくれました。

「中学生の時に、友達の家でセックス・ピストルズを知りました。彼らの存在は本当に衝撃的でしたね。それまで僕は、音楽ってある程度の楽器の技術が必要だと思っていたんです。でもピストルズは違った。たった3コードだけで、世界にものすごいインパクトと影響を与えたわけですから」

セックス・ピストルズは70年代のロンドンで結成され、世界の音楽シーンを揺るがした伝説のパンクバンド。サウンドは極めてシンプルながら、反体制的なメッセージと、過激なファッションセンスも相まって、スタジオ・アルバム1枚を残しただけにも関わらず、その後の音楽界にも多大なる影響を残しました。

「今でも、表現方法は違いますが、ピストルズが残したものと同じことがしたいと思って、この世界でやっています。ビジュアルを用いて、社会的な革命を起こしたいんですよ」



技術はなくても、世の中は変えられる。

現在、久田さんが力を入れているのが、DIYの普及活動。そのロックンローラーのような、もしくはファッションデザイナーのような風貌がゆえに、ふと忘れてしまいそうになりますが、かつて5年にわたって大工として修行をしていた身。当然、ノコギリもトンカチもお手の物なわけです。

「僕がつくりたいと思うのは、僕自身が好きだと感じる空間だけ。興味のない人の夢など、叶えることはできません(笑)。というのは冗談で、何が言いたいかというと、けっきょく自分のことは自分でしかできないんですよ。服だって誰かに着せられているわけではないですよね? 

だから、自分の家や、自分の部屋くらいは、自分でいじってみましょうということを伝えたい。最初は壁にお気に入りのポスターを1枚はるところからで構いません。そこからはじまって、床に板をはったり、壁を塗り替えたり、それくらいは意外と簡単にできるし、すぐカッコよくなるんですよ」

「長い目で見ると、これから世帯数がどんどん減り続けて、建物の値段はかなり安くなっていきます。例えば内装を自分でDIYしてしまうとすれば、1000万円くらいでそれなりの家が買えてしまう。つまり、35年ローンだとしたら、月々の返済なんてわずか3万円程度。ワンルームマンションに住むより安い値段で、自分だけのカッコいい家に住めるんですよ」

確かにおっしゃる通り。いま住んでいる賃貸マンションの家賃より安い額で、自分だけのお気に入り空間に住めるとなると、デメリットはないように思えます。

ただ、設計やデザインを生業としている久田さんから出てくるべき言葉ではないような気も……。一般人がみんなDIYで自分の住まいをつくり変えてしまったら、商売あがったりなのでは?

「いやいや、そんなことはありません。我々は、『それでもプロに頼みたい』という人の仕事をやればいいんです。むしろそうありたい。今はプロである私たちがやる必要のない仕事もやっている状態。フローリングをはって、壁を白くするくらい、本当に誰にだってできるんですから。

そうやってDIYの文化が広まって、もっと街に個性のある建物が増えてほしいんです。我々の会社に発注がくるかどうかなんて、二の次だから」

「昨今、フルオーダーで家を建てた後、出来上がった自分の家のあら探しに躍起になる施主の方が増えているそうです。なぜそんなことになるかと言うと、やはり最後までつくり切ってしまうから。誰だってフルオーダーのスーツが間違った状態で納品されたら文句を言いますよね? それと同じ。でもその流れは、建てる側にとっても、住む側にとっても幸せなことではありません。

スーツですら3回はつくらないと自分に完璧に合うものはできないと言われています。それなのに、家や店舗を1発でつくるなんて、とんでもない話。やはり、多かれ少なかれ、トラブルは出てきます。そこで、すべてを業者さん任せにするのではなく、最後の少しだけでも自分でやれたら、状況はもっと良い方向へと変わっていくと思うんです」

話はグルっと回って、最初の『ナイン』という社名の由来と同じ文脈へと戻ってきました。やはり、久田さんが考える本質の部分は、そこにあったようです。

「別に建築家や設計士じゃなくても、かっこいいものはつくれるんです。一般の人たちが『自分でつくっていいんだ』と気づいた時に、世の中の状況は一気に変わっていくと思います。我々がそんな改革の拠点になれればいいなと思って、DIYの普及にも取り組んでいるんですけどね」

自身の手がけたビジュアルで、社会的な革命を。一般人のDIYで、街の景観に革命を。「技術なんかなくたって、世の中は変えられる」。当時、中学生だった久田少年がセックス・ピストルズから衝撃とともに学んだ大切な教えは、今なお、息づいているようです。

以上がインタビュー記事内容となります。ライフスタイルマガジンRENOSTAの雨森さん、ありがとうございました!

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